


















南松山の住居
国道沿い交差点・変形敷地・浸水想定区域
国道沿いの交差点に建つ住居。長く空き地だった土地と空き家になった土地が合わさった変形敷地である。すぐ近くに河川があるが、狭窄区間になっているため十数年に一度氾濫を繰り返している。
地盤調査をしてみると不同沈下のおそれがあったため表層改良をおこなうことにした。浸水を避けるため基礎下を盛土状に嵩上げした高基礎とし、1階床を持ち上げている。
23mの車道、3.5mの歩道、1.5mの「通り」
国道は約30mの幅があり片側3.5mの歩道がある。交通量の多い国道と居住空間の緩衝帯として、計画する住居の内部に国道に並行した「通り」を通すことにした。「通り」は幅1.5m、長さ7間、2層吹抜けの石張りで、国道に対し1階は壁で閉塞し、2階は全て開口としている。居住空間において感じる車の速さ・音をできるだけ消し、光だけを取りこんでいる。国道側を「通り1」として、反対側にも3尺間の「通り2」を通した。この2本の通りの間を居住空間とし、通りの両端同士を結ぶ貫通通路を設け、行き止まりのない動線を作っている。
7間×2面=14間のユニット
2本の「通り」の外側に1間ピッチの耐力壁のリブを設け、リブの間をそれぞれの居住空間に応じた設えとした。キッチンには家電収納、食器棚。水回りにはクローゼット、物干し、洗面。ダイニングには本棚。収納以外にベンチ、カウンターも組み込み、「通り」にはみ出せる居場所をあちこちに作った。
夏と冬で逆向きの対流をつくる
冬は1階ベンチ下に設置したAC1台を床下へ吹込むと、基礎内部の全体へ行き渡った暖気が床や壁に設けた吹出し口から穏やかに出てくる。玄関も水回りもトイレも寒くない。暖気は吹抜けを介して2階へ上がり、冷却されるとすのこを通って1階へ下がる。
夏はロフトに設置したAC1台を吹抜けに向かって吹くと、吹抜けから下がった冷気が1階全体へ行き渡り、ぬるくなった空気はすのこを通って2階へ上がる。
融通無碍な器
やや不愛想な住居である。杉板張りの外壁には高窓しかなく内部の様子が分からない。大きくはね出した庇の下、階段をあがり引き戸を開け中へ入ると、2ヶ所の手洗い以外は建具が無い。収納にも戸が無い。水回りのボリューム以外には間仕切り壁も無い。2階はがらんどう。
何も無いが内部の軸組みはあらわしになっているので手を加えやすい。あるのは、2本の「通り」とその間、14間のユニット、がらんどうの2階という簡素な構成だけである。
今は6人家族の住居であるが、時が移ろえば人員も入れ替わる。住居ではないものになるかもしれない。メンバーや用途が変わったとしても人の暮らし・営みを支えることのできる融通無碍な器としての建築を目指した。
■性能・設備
Ua 値:0.39
断熱材:
屋根 高性能グラスウール16kg 315mm
外壁 高性能グラスウール16kg 225mm
基礎 フェノールフォーム断熱材1種2号C 60mm
開口部:アルミ樹脂複合サッシ Arガス入りLow-E ペアガラス
換気:ダクト式第三種換気
暖房:床下AC
冷房:ロフトAC
太陽光発電:8.9kW
蓄電池:10kWh
■認定等
長期優良住宅(耐震等級3)
所在地 | 愛知県豊橋市 |
用途 | 住宅 |
構造・規模 | 木造2階建・148.80㎡ |
竣工 | 2024年12月 |
協働 | 構造設計スタジオ シエスタ 千葉 俊太 |
施工 | 中條建築 中條 雄介 Hara Design Lab 原 茂貴 |